2014年

4月

16日

ダンススクールと風俗営業許可

風営法第2条1項において規定する『ダンス』とは、「社交」性に比重の高いダンスを対象にしています。

 

それは、そのような「社交」に比重の高いダンスにあっては、人と人との交際の中でも男女間の交際を主たる目的としており、その本質にかんがみ、男女間の享楽的雰囲気が醸成されるものであることから、

当該ダンスに係る営業の行われ方によっては、そのような享楽的雰囲気が過度にわたり、風営法の目的(善良の風俗と清浄な風俗環境の保持、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止)を阻害するからであると言われています。

 

社交ダンスのような男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされているペアダンスは、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があるから善良の風俗を害するおそれがあるというわけで、このような男女がペアになるダンス営業行為が規制されています。

 

これに対して、風営法第2条1項4号では、以下の規定に該当するダンススクール営業は、風俗営業から除外しています。

 

客にダンスを教授するための営業うちダンスを教授する者が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業

 

これは、ダンススクール営業は、技能及び知識の教授を主たる対象としていることから、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたることなく、したがって、風営法の目的である善良の風俗を害するおそれはないとされるからです。

 

ただし、ダンスを教授するダンススクール営業なら、すべて風営法の規制対象外になるという意味ではありません。

 

ダンススクール営業におけるダンスを教授する者(ダンスインストラクター)に一定の要件が必要とされています。

 

風営法第2条1項で、下記のように規定して一定水準以上の技能・知識が備わっていることを要件としています。

 

政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者に限る。

 

このようにインストラクターに一定の要件が必要とされているのは、

ダンススクール営業は、本来的に男女間の社交を主たる要素とするダンスにつき教育を行うものであるところ、営業者等と客とが、ダンスの知識・技能の教授・習得という共通の目的の下に、ある種の師弟関係に立つことによって、初めて男女間の享楽的雰囲気が醸成されなくなるものであるから、

このことの当然の前提として、ダンスインストラクター等ダンスを教授する側に一定水準以上の技能・知識が備わっていることが必要だというわけです。

 

このことから、ダンススクール営業において、資格のないダンスインストラクター等がダンスを指導する場合には、風営法の許可が必要になりますので注意が必要です。

 

では、どのようなものが、政令で定めるダンスの教授に関する講習というのか、また、ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者なのかは、平成24年に改正され、風営法施行令、施行規則に定められています(平成24年11月21日に公布、施行)。

 

このように、ダンススクール営業はじめ、ダンスに関する営業形態は改正等の動きもあり、これから営業を開始する場合は最新の情報に注意する必要があります。

2014年

4月

09日

ダンスに関する風俗営業許可~3類型

ダンス営業に関して、大きく3つの分類があります。

 

風営法2条1項1号の「キャバレーその他の設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客の接待をして客に飲食させる営業」

 

同法3号の「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(上記の1号にあたる営業を除きます)」

 

同法4号の「ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業(第一号若しくは前号に該当する営業又は客にダンスを教授するための営業うちダンスを教授する者(政令で定めるダンスの教授に関する講習を受けその課程を修了した者その他ダンスを正規に教授する能力を有する者として政令で定める者に限る。)が客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業を除く。)

 

の3つがあります。

 

キャバレーのような『ダンス+飲食+接待』営業

 

ナイトクラブのような『ダンス+飲食』営業

 

ダンスホールのような『ダンス』営業

 

と簡略したら、接待があるか否かで、飲食があるか否か、ダンスだけなのか

で許可が必要な許可類型が分かります。

この3類型とも、客室面積は66㎡必要な点は同じですが、細かくみれば、1号3号は、ダンスをさせるための客室部分の床面積が5分の1以上が必要な点や1号3号は営業所内の照度が5ルスク以上、4号は10ルスク以上かの違いもあります。

 

 

さらに地域の条例でも保護対象施設の距離制限に違いがあります。

 

大阪府の条例では1号も3号も4号も保護対象施設の距離制限については違いはありませんが(大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 第2条参照)

 

京都府の条例ではキャバレー、ナイトクラブの1号、3号と、ダンスホールの4号とでは保護対象施設の距離制限が異なります(京都府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 第3条参照)

 

また、兵庫県の条例ではキャバレーの1号と、ナイトクラブ、ダンスホールの3号、4号とでは保護対象施設の距離制限が違います(兵庫県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 第3条参照)。

 

このようにダンスに関する営業をはじめる際には、どんなダンス営業形態を行うか、そして営業所の所在地域によっても保護対象施設の距離制限の要件が異なりますので、きちんと事業内容を把握して要件の調査や許可申請手続が必要になります。

 

2014年

4月

02日

風俗営業許可と無許可営業

風俗営業許可には大きく3つの要件があります。

 

①人的要件 (風営法4条1項)

②構造的要件(風営法4条2項1号)

③場所的要件(風営法4条2項2号)

 

の3つです。

 

これら3つの要件をクリアしているかどうかを確認して、管轄の公安委員会に許可申請を行います。

これらの要件が一つでも欠けると申請はできませんので、厳格な事前の調査が必要です。

 

無許可で営業を行うと2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金の刑に処せられます(風営法49条)

(懲役刑と罰金刑が併せて科せられる場合もあります)。

 

その場合、欠格期間は5年間となっており(風営法4条1項2号イ)『人的要件』を満たさないことになり、5年間、許可申請をできません。

 

この風俗営業許可の『風俗』の意味を性風俗と理解して、そもそもご自分の営業形態が『風俗営業許可』を必要とするとは知らない方も多いです。

例えば、ダンス営業をしている場合、ダンスがまさか風俗営業許可が必要だとは知らない方も多いです(風営法2条1項4号)。

そしてダンスの中には、社交ダンスもあれば、ヒップホップダンスもあり、盆踊りもあります。すべてが一律に『ダンス』として風営許可が必要ではありません。男女間の享楽雰囲気が過度に渡る場合が風営法2条1項4号の『ダンス』とされ、許可が必要となります。

 

このように判断も明確ではなく、仮に許可が必要だとは知らなかったから、故意はなかったと思われる方もいらっしゃるでしょう。

 確かに無許可営業は故意犯です。しかし、風俗営業については許可を要することを知らなかった、又は自分の営業が風俗営業に該当しないと考えていたとしても、いずれも法律の錯誤に過ぎず故意を阻却しない、つまり故意はあると認定されるのが法の建前です。

 

このダンスの場合と同じように誤解が多いのが、飲み屋さんで女性が横に座ってお客様にお酌、談笑などをする行為です。これらの行為が風営法2条1項2号の『接待』に該当することを知らなかったとしても、法律の錯誤であって直ちには故意を阻却しないと解されています。

 

このように事業をはじめる場合には、ご自分の事業内容をしっかり把握して本当に風俗営業許可が必要ないかなどを確認しておく必要があります。